Column|ウィズコロナにおけるものづくり。

近代の進歩と言えば「工業化」による利便性と快適性の追求。そこには「一極集中」という強い磁力が働き、地方から都心へ、分散から集合へ、異質から同質へ。そうやって我々が暮らす場所や、住まいや、衣服は、それらと共に生きる我々の「価値観」を道連れに、100年以上かけて一つの焦点に向けてずっと密度を高めてきました。そうやって成熟した先に見えた世界に対して覚えた違和感、不協和音、不快感に対して一部の敏感な人々は既にその「集中」の呪縛を解こうと水面下で動き続けていました。

そんな緊張の糸が、遂に感染力高いウィルスによって引き裂かれようとしているのが今という時代です。当然、直前までのテンションが強いほど、弾けた時の反動が強いですから、あと数年は冷静に事態を見極めて行く必要があるでしょう。しかし、これから数十年、数百年のレベルで変わらないものがあるとしたら、それは「地球環境」への取り組みです。今回のウィルスも、凶暴化した豪雨、台風も、人類の過度な工業化に対する副産物であることは言うまでもありません。

大量生産、大量消費の時代において、我々人類に希望があるとしたら、それは一人ひとりに「選ぶ力」があるということです。我々一人ひとりは、せいぜい100年程度の自分が生きる時代の事しか考えられない「弱い生き物」です。だからこそ、そんな時代、一人ひとりに「選ぶ」ための選択肢をしっかりと提示していく、新しい未来のカタチ、希望を見せていく。今の時代に「ものをつくる」ということは、そういった責任をどの時代に生きた人類よりも背負っているという覚悟が必要なんだと思っています。

素材として再生ポリエステルを使う、収益の一部を社会課題に取り組む人たちへ寄付をする。そういったテクニカルな取り組みももちろん大切ですが、本質的に実現したいのは「ランニングのあるライフスタイル」を力強く後押しすること。ただ「走る」という究極にシンプルな営みに、今ほど人類の未来に対する可能性を感じたことはありません。「ランニングのあるライフスタイル」を一人でも多くの人が取り入れることによって、結果的に「生き方」そのものを集合から分散へ、同質から異質への回帰をポジティブに肯定できる世の中にしていく。それこそが、Runtrip Storeが追求する「もっと自由に、楽しく走れる世界」の創造なんだと、激動の2020年に思いを新たにしています。